臨床の現場において、成人の突発性発疹に遭遇することは決して多くはありませんが、その分、遭遇した際の症状の激しさには目を見張るものがあります。専門医の立場から警鐘を鳴らしたいのは、大人の場合、単なる皮膚疾患としての側面よりも、全身性の炎症性疾患としての側面が強く出るという点です。高熱が続く期間が長く、脱水症状や電解質異常を引き起こしやすいだけでなく、深刻なのはウイルスが中枢神経系に侵入するケースです。突発性発疹の原因ウイルスであるヒトヘルペスウイルス6型は、親和性の高い神経細胞を攻撃し、髄膜炎や脳炎を引き起こすポテンシャルを持っています。大人が発症し、激しい頭痛に加えて意識障害や痙攣、麻痺などの症状が見られた場合は、一刻を争う緊急事態と考えなければなりません。また、肝機能障害も注意すべき合併症の一つです。血液検査で肝酵素の数値が跳ね上がり、劇症肝炎に近い状態になることも報告されています。このように、大人の突発性発疹は決して「子供の病気の居残り」ではなく、命に関わることもある重症疾患であるという認識を持つべきです。対処法としては、現在のところ特効薬となるような抗ウイルス薬は一般的ではなく、基本的には対症療法が中心となります。解熱鎮痛剤の使用に際しては、アスピリン系の薬剤はライ症候群などのリスクがあるため避け、アセトアミノフェンなどを主成分とする比較的安全な薬を選択することが推奨されます。しかし、自己判断での薬の使用は症状を隠蔽したり悪化させたりすることもあるため、必ず医師の指示に従ってください。水分補給は経口補給水などを活用し、少しずつ回数を分けて行うことが重要です。また、発疹が出た後は、皮膚が非常に敏感になっているため、石鹸の使用を控えたり、ぬるま湯でのシャワーに留めたりするなど、物理的な刺激を最小限に抑える工夫も必要です。何よりも重要なのは、熱が下がったからといってすぐに社会復帰しようとしないことです。大人の体にとって、このウイルスとの戦いは想像以上にエネルギーを消費しています。病み上がりの時期に無理を重ねると、心筋炎などの恐ろしい二次的疾患を招く可能性も否定できません。自分はもう若くない、あるいは自分の体は今大きなダメージを受けているのだと自覚し、完全に快復するまで徹底的に休養を取る勇気を持ってください。
専門医が解説する大人の突発性発疹の重症化リスクと対処法