大人の水疱瘡は子供のそれに比べて重症化しやすく、非常に過酷な経過を辿ることで知られています。私自身、三十代半ばで水疱瘡を発症した際、そのあまりの苦しさに人生で一番の恐怖を感じました。事の始まりは、激しい腰痛と耐え難い頭痛、そして身体の奥から湧き上がるような悪寒でした。最初はひどいインフルエンザにでもかかったのかと思いましたが、二日目に鏡を見ると、首筋に奇妙な赤い斑点が出現していました。それからは瞬く間に事態が悪化しました。熱は一気に四十度を超え、意識が朦朧とする中で、発疹が胸、背中、そして腕から足の先にまで猛烈な勢いで広がっていきました。子供の水疱瘡であれば「数日で治る」というイメージがありましたが、大人の場合はそうはいきません。皮膚の表面だけでなく、喉の奥や鼻の粘膜にまで水疱ができ、水を飲み込むことさえ激痛を伴う修行のような状態になりました。特筆すべきは、その痒みと痛みの混ざり合ったような独特の感覚です。皮膚が内側から焼かれるような熱を持ち、そこに針で刺されるような痒みが加わり、一分一秒もじっとしていられないほどの苦痛に苛まれました。病院では抗ウイルス薬であるアシクロビルが処方されましたが、薬が効き始めてウイルス増殖が止まるまでの数日間は、まさに地獄のような経過を辿りました。成人の水疱瘡で特に注意が必要なのは、肺炎や脳炎といった重篤な合併症のリスクです。私の場合も呼吸が少し苦しくなり、医師からは「これ以上酸素飽和度が下がるなら入院です」と警告されました。幸いにして入院は免れましたが、熱が下がり始めるまでに五日間、そして全身の水疱が完全にかさぶたになるまでには二週間近くを要しました。さらに、発疹の痕がなかなか消えないのも大人の特徴です。水疱が非常に大きく、炎症が深かったため、治癒した後も皮膚には赤い色素沈着が残り、一部は凹凸を伴う瘢痕となってしまいました。これらが目立たなくなるまでには半年以上の歳月が必要でした。大人が水疱瘡を発症すると、仕事への影響も甚大です。二週間に及ぶ強制的な隔離期間は社会生活において大きな痛手となります。もし、幼少期に水疱瘡にかかっていない、あるいは予防接種を受けた記憶がない大人がいるならば、血液検査で抗体価を確認し、必要であれば直ちにワクチンを接種することを強くお勧めします。大人の水疱瘡という病気は、単なる子供の病気の居残りではなく、身体を根底から破壊しかねない恐ろしい感染症であるというのが、その過酷な経過を経験した私の偽らざる実感です。