子供の病気というイメージが強いヘルパンギーナですが、大人が感染した場合の症状は往々にして子供よりも重篤化し、その苦しみは筆舌に尽くしがたいものがあります。三十代男性のAさんは、保育園に通う長女がヘルパンギーナを発症した数日後、突如として四十度の高熱に見舞われました。当初は激しい悪寒と筋肉痛に襲われ、インフルエンザを疑いましたが、翌朝になると喉と舌に異常な違和感を覚え始めました。鏡で確認すると、舌の縁と喉の奥に、白く濁った水疱が点在しており、それが時間と共に拡大し、激しい痛みを放ち始めたのです。大人のヘルパンギーナにおける舌の症状は、単なる口内炎の集合体ではなく、舌全体が腫れ上がり、話すことさえ困難になる「灼熱感」を伴うのが特徴です。Aさんは、自分の唾液を飲み込むたびに喉と舌に電気が走るような激痛を感じ、洗面器に唾液を吐き出し続けなければなりませんでした。市販の鎮痛剤もほとんど効果をなさず、水すら飲めない状態が二日間続いたため、Aさんは重度の脱水症状と栄養不足で医療機関に担ぎ込まれました。病院での血液検査では強い炎症反応が確認され、点滴による水分と栄養の補給、そして強力な鎮痛剤の投与が行われました。医師の診断によれば、大人は幼少期にエンテロウイルスに対する免疫を獲得しているはずですが、ウイルスの型が異なっていたり、過労やストレスで免疫力が著しく低下していたりすると、防衛機能が働かずに激しい症状を呈することがあるとのことです。Aさんの場合、舌の潰瘍が完全に癒えるまでに十日間を要し、その間はまともな食事を摂ることができず、体重は五キロも減少しました。さらに、舌の痛みが引いた後も、味覚の異常や違和感が数週間にわたって残り、社会復帰した後も完全な体調回復には時間を要しました。この事例から明らかなのは、ヘルパンギーナは決して子供だけの病気ではなく、大人の健康を根底から揺さぶる脅威になり得るということです。特に子供を看病している大人は、残った食事を口にしない、タオルの共有を避ける、オムツ替えの後は徹底的に手洗いを行うといった基本的な防衛策を厳守しなければなりません。大人の舌を襲うヘルパンギーナの激痛は、日常生活のすべてを停止させるほどの破壊力を持っており、その予防と早期の医療介入の重要性を再認識させる教訓となりました。