病院実習という未知の環境に身を置くと、多くの学生が直面するのが、指導医や看護師に対して何を質問すれば良いのか分からないという悩みです。大学の講義で学んだ知識を携えて現場に臨んでも、実際の臨床現場は情報の洪水であり、目の前の現象を理解することに精一杯になってしまうのが現実です。質問が思いつかない最大の原因は、知識不足というよりも、むしろ現場のスピード感に圧倒され、自分の思考を整理する余裕を失っていることにあります。教科書に書かれている標準的な症例と、個別の背景を持つ目の前の患者さんの間にある差異に気づくことができれば、そこが質問の出発点となります。例えば、なぜこの患者さんにはこのタイミングでこの検査が必要なのか、あるいはなぜ教科書通りの処置ではなく別の手法が選択されたのかといった、判断の根拠を問う姿勢が重要です。また、質問を絞り出すことに躍起になるあまり、難しいことを聞かなければならないという強迫観念に囚われる必要もありません。現場で感じた素朴な疑問や、スタッフ同士の連携の取り方など、多角的な視点を持つことで、自然と問いは生まれてくるはずです。実習は単に知識を確認する場ではなく、プロフェッショナルの思考プロセスを盗む場であると捉え直すことで、質問の質も量も劇的に変化していきます。自分の考えを一度頭の中で組み立て、私はこう考えましたが先生はどうお考えですかという形で提案型の質問を投げかけることも、深い学びへと繋がる有効な手段となります。沈黙を恐れず、まずは目の前の現象を丁寧に観察し、そこにある違和感を大切にすることから始めてみましょう。