沈黙の病棟実習を乗り越えた私の経験談
看護学生として初めての病棟実習に臨んだ際、私は毎日が苦痛で仕方がありませんでした。指導担当の看護師さんの後ろをついて歩くものの、何を聞けばいいのか全く思いつかず、ただ黙って立っているだけの時間が過ぎていきました。担当の方から「何か質問はない?」と聞かれるたびに、頭の中が真っ白になり、申し訳程度の言葉を絞り出すのが精一杯だったのです。ある日のカンファレンスで、私は自分の不甲斐なさに落ち込み、正直に「何を聞けばいいのか分からない」と打ち明けました。すると、ベテランの看護師さんは笑って、最初はみんなそうだと励ましてくれました。彼女が教えてくれたのは、質問を考えようとするのではなく、自分が何に驚いたか、何に納得したかという感情を言葉にしてみるということでした。それからの私は、例えばモニターの数値が少し動いたときに看護師さんがどう反応したか、患者さんへの声掛けでどのような言葉を選んでいたかといった、細かな挙動に注目するようになりました。すると不思議なことに、「なぜあそこで少し間を置いたのですか」といった、教科書には載っていない実践的な質問が次々と浮かぶようになったのです。完璧な質問をしようとしていた自分自身のプライドが、学びの壁になっていたことに気づかされました。分からないことを分からないと言える勇気と、小さな変化を見逃さない観察眼があれば、実習はもっと自由で楽しいものになります。今の私は、後輩が質問に困っている姿を見ると、かつての自分を思い出し、まずは自分の感じたことを大切にしてみてと伝えています。実習の成果は、どれだけ難しい質問をしたかではなく、どれだけ現場を自分事として捉えられたかで決まるのだと確信しています。