小児科の臨床現場において、RSウイルス感染症の流行期は最も緊張感が高まる時期の一つです。なぜなら、このウイルスは二歳までの子供がほぼ百パーセント感染する極めて一般的なものですが、一部の乳幼児においては気管支炎や肺炎を急激に進行させ、入院加療が不可欠な状態へと一気に押し進めるからです。医師が入院を判断する際の指標は多岐にわたりますが、最も重視するのは呼吸効率の低下です。具体的には、呼吸回数が異常に多い頻呼吸、努力性呼吸と呼ばれる体全体を使った呼吸、そして呻吟といわれる、息を吐くときにウーウーと唸るような声が漏れる状態です。これらはすべて、体内の酸素を維持するために予備能力を使い果たしている兆候であり、即座の入院酸素療法が必要となります。また、生後一ヶ月から三ヶ月未満の新生児や早期乳児の場合、RSウイルスは無呼吸発作を引き起こす危険性があります。熱が出ていなくても、突然呼吸が数秒間止まったり、顔色が急激に悪くなったりすることがあり、これは家庭での管理は不可能です。入院の目安として、保護者の方には「機嫌」と「哺乳量」を注意深く見るよう指導しています。遊びに誘っても全く乗ってこない、視線が合わない、ぐったりとして抱っこしても力が抜けているような状態は、低酸素症が進行しているサインである可能性が高いです。また、喘鳴が強く、呼吸するたびに喉元や肋骨の下が凹むような陥没呼吸が見られる場合は、迷わず受診してください。病院では、単に酸素を投与するだけでなく、高流量鼻カニュラ酸素療法といった特殊な器具を用いて、気道に圧力をかけながら酸素を送り込む処置を行うこともあります。これにより、狭まった気道を物理的に広げ、呼吸の負担を軽減させることができます。RSウイルスによる入院期間は平均して五日から一週間程度ですが、その間、医師や看護師が二十四時間体制で呼吸状態をモニタリングすることが、最悪の事態を防ぐための唯一の防波堤となります。保護者の皆さんには、たかが風邪と侮らず、しかし過度にパニックにならず、子供の呼吸のサインを正確に捉えていただきたい。特に、夜間に咳がひどくなり、眠れないほど苦しそうであれば、それは入院の必要性を示唆する体からのメッセージです。適切なタイミングでの入院は、決して大げさなことではなく、子供の未熟な呼吸機能を医学の力で支えるための、理にかなった選択なのです。
小児科医が説くRSウイルスで即座に入院が必要な症状と注意点