線維筋痛症という病気のつらさは、全身の激しい痛みだけではありません。むしろ、それ以上に患者さんを苦しめているのが、「誰にも理解されない」という孤独感と、社会からの孤立です。検査では異常が見つからないため、「気のせい」「怠けている」といった誤解や偏見にさらされ、心身ともに追い詰められてしまうのです。もし、あなたの身近な家族や友人が、この見えない痛みと闘っているとしたら、周囲の人の理解とサポートは、何よりも強力な「薬」となり得ます。では、具体的に、周りの人は何をすることができるのでしょうか。まず、最も重要で、そして最も基本的なことは、「病気を正しく理解しようと努めること」です。線維筋痛症が、本人の気の持ちようや、精神的な弱さが原因なのではなく、脳の機能異常によって起こる、れっきとした「病気」であることを理解してください。痛みが客観的な検査に表れないからといって、その存在を疑わないこと。これが、信頼関係を築くための第一歩です。次に、「本人の訴えに、共感的に耳を傾けること」です。「今日は痛みがひどくて、何もできない」「体が鉛のように重い」。こうした訴えに対して、「頑張って」「気の持ちようだ」といった安易な励ましは、かえって本人を傷つけます。ただ、「そうか、つらいね」「大変だね」と、その苦しみを受け止め、共感する姿勢を示すだけで、患者さんの心は大きく救われます。話を聞いてもらえるだけで、「自分は一人じゃない」と感じることができるのです。そして、「具体的な手助けを申し出ること」も大切です。「何か手伝おうか?」と声をかけ、買い物や家事の一部を代わってあげる、病院への付き添いをする、といった具体的な行動は、患者さんの身体的な負担を直接的に軽減します。また、線維筋痛症の症状は、日によって、あるいは時間によって大きく変動します。「昨日は元気そうだったのに、今日はなぜ動けないの?」と、その変動に戸惑うこともあるかもしれません。しかし、それもこの病気の特徴の一つです。その日その時の状態を受け入れ、「調子の良い日」と「悪い日」があることを理解し、柔軟に対応してあげてください。病気と闘っているのは本人ですが、家族や友人は、その闘いを支える最も心強いチームメイトです。あなたの温かい理解とサポートが、暗闇の中にいる患者さんにとって、一筋の光となるのです。
家族や周りの人ができること。線維筋痛症患者への理解とサポート