私が、人生で初めて蕁麻疹というものを経験したのは、30代の冬、ひどい風邪をこじらせていた時のことでした。数日間、39度前後の高熱と、激しい喉の痛みに苦しみ、ようやく熱が下がり始めた、まさにその矢先でした。夜、ベッドで横になっていると、太もものあたりが無性にかゆいのです。最初は乾燥のせいかと思いましたが、かゆみは徐々に腕やお腹、背中へと広がっていきました。鏡を見ると、そこには衝撃的な光景が。私の体中に、まるで蚊に刺された後のように、赤く、不規則な形の膨らみが、地図のように広がっていたのです。その見た目の異様さと、耐え難いかゆみに、私はパニックになりました。「何かのアレルギー?」「薬の副作用?」。熱で弱っていた頭は、悪い想像ばかりを膨らませました。特に、かゆみは夜になるとひどくなり、ほとんど一睡もできませんでした。翌朝、私はすがるような思いで、風邪でかかっていた内科のクリニックを再受診しました。医師は私の全身の発疹を見るなり、「ああ、これは蕁麻疹ですね。おそらく、風邪のウイルスに対する免疫反応で出たものでしょう」と診断しました。いわゆる「感染性蕁麻疹」というもので、病原体と戦った後の体の免疫システムが、少し過剰に反応してしまった結果なのだと説明を受けました。原因がはっきりしたこと、そして、それが命に関わるようなものではないと分かったことで、私は心から安堵しました。治療としては、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬の飲み薬と、塗り薬が処方されました。医師の言葉通り、薬を飲み始めると、あれほどしつこかったかゆみは、数時間で劇的に和らぎました。そして、赤く腫れあがっていた膨らみも、翌日には跡形もなくきれいに消えていました。この経験は、私に、感染症が引き金となって、予期せぬアレルギー反応が起こりうることを教えてくれました。そして、原因不明の症状が出た時には、自己判断で不安に陥るのではなく、専門家の診断を仰ぐことが、いかに心を落ち着かせてくれるかを、身をもって知ることになったのです。
高熱と全身の痒み。私が経験したウイルス性蕁麻疹の恐怖