いちご舌は子どもの病気と思われがちですが、大人にも発症し、時には私たちの体が発するSOSサインであることがあります。舌の表面が赤くブツブツとした見た目になるこの症状は、単なる口内炎とは異なり、その背後には様々な健康問題が潜んでいる可能性があります。私が以前、地域医療のボランティアに参加した際、健康相談に来られた高齢の女性が、長期間続く「いちご舌」に悩んでいると打ち明けてくれました。彼女は数ヶ月前から舌に違和感があり、食欲も低下しているとのことでした。詳しく話を聞くと、特定の栄養素が不足している可能性が浮上し、専門医の受診を勧めました。大人のいちご舌の最も一般的な原因の一つは、栄養不足です。特に、ビタミンB群(B12、葉酸など)や鉄分が不足すると、舌の粘膜の再生が阻害され、炎症を起こしやすくなります。ビタミンB12は肉や魚、乳製品などに多く含まれており、不足すると悪性貧血を引き起こすこともあります。また、葉酸は緑黄色野菜や豆類に豊富で、細胞分裂に重要な役割を果たします。鉄分は赤身肉やレバー、ほうれん草などに多く含まれ、貧血と深く関連しています。この女性の場合も、偏った食生活と加齢による栄養吸収の低下が原因で、これらの栄養素が慢性的に不足していたことが後に判明しました。次に考えられるのが、ストレスや疲労による免疫力の低下です。ストレスは自律神経のバランスを崩し、体の抵抗力を弱めます。免疫力が低下すると、口の中の常在菌のバランスが崩れ、些細な刺激でも舌が炎症を起こしやすくなります。また、過度の疲労は全身の機能を低下させ、栄養素の吸収を妨げることもあります。現代社会に生きる私たちにとって、ストレスや疲労は避けて通れない問題ですが、それが体のどこかに不調として現れることは少なくありません。さらに、特定の感染症も大人のいちご舌を引き起こすことがあります。溶連菌感染症は子どもに多いとされていますが、大人でも発症する可能性はあります。溶連菌感染症の場合、いちご舌以外にも発熱、喉の痛み、全身倦怠感などの症状を伴うことが多いため、他の症状との併発に注意が必要です。ごく稀ではありますが、性感染症の中には、舌に異常をきたすものも存在するため、気になる症状があれば専門医に相談することが重要です。
見逃せないサイン!大人のいちご舌と体のSOS