通院・薬・介護など日常の医療サポート情報

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  • 自分でできる頻尿対策。膀胱訓練と骨盤底筋体操

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    頻繁な尿意に悩まされているけれど、病院に行くほどではない、あるいは薬には頼りたくない。そう考える方にとって、自分自身で取り組めるセルフケアは、症状改善のための大きな武器となります。特に、「膀胱訓練」と「骨盤底筋体操」は、過活動膀胱などの頻尿治療においても、基本となる重要なアプローチです。まず、「膀胱訓練」とは、その名の通り、膀胱をトレーニングし、尿を溜める能力を高めていく方法です。尿意を感じるたびにすぐにトイレに行っていると、膀胱が少ない尿量に慣れてしまい、ますます頻尿が悪化するという悪循環に陥ります。このサイクルを断ち切るために、尿意を感じても、すぐにトイレには行かず、少しだけ我慢する習慣をつけるのです。最初は、5分だけ我慢してみる、ということから始めます。それができたら、次は10分、15分と、徐々に我慢する時間を延ばしていきます。最終的な目標は、排尿間隔を2〜3時間程度にまで広げることです。もちろん、無理は禁物です。我慢できないほどの強い尿意の時は、トイレに行っても構いません。大切なのは、「少し我慢できた」という成功体験を積み重ね、「膀胱は、自分が思っているよりも、ちゃんと尿を溜められるんだ」という自信を取り戻すことです。この訓練を続けることで、膀胱が適切な尿量を溜めることに慣れていき、頻尿が改善していきます。次に、「骨盤底筋体操」です。骨盤底筋とは、骨盤の底にハンモックのように広がり、膀胱や子宮、直腸などを支えている筋肉群です。この筋肉は、尿道を締めて尿漏れを防ぐ、という重要な役割も担っています。しかし、加齢や出産などによって、この筋肉が緩んでしまうと、尿意切迫感や尿漏れの原因となります。この骨盤底筋を、意識的に鍛えるのが骨盤底筋体操です。やり方は、まず、仰向けに寝て、両膝を軽く立てます。そして、肛門と膣、尿道を、きゅーっと締めるような感覚で、力を入れます。この時、お腹やお尻の筋肉に力が入らないように、骨盤の底だけを意識するのがポイントです。数秒間締めたら、ゆっくりと力を抜きます。この「締めて、緩める」という運動を、10回程度を1セットとして、一日に数回、継続して行います。この二つのセルフケアは、すぐに効果が出るものではありません。しかし、数週間から数ヶ月、根気よく続けることで、多くの人が症状の改善を実感しています。

  • 歩けないほどの激痛。大人の手足口病の症状

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    大人の手足口病を経験した人の多くが、口を揃えてこう言います。「あの痛みは、人生で経験した痛みの中でも三本の指に入る」と。子供の病気という穏やかなイメージとは裏腹に、大人がかかる手足口病は、「激痛」との壮絶な戦いになることを覚悟しなければなりません。その痛みの主戦場は、主に「手足」と「喉」です。まず、手足の発疹です。手のひらや指、足の裏、足の甲などに、赤い斑点から始まる水疱性の発疹が多数出現します。子供の発疹と見た目は似ていますが、その性質は全く異なります。一つひとつの発疹が、まるで神経に直接触れるかのように、ズキズキ、ジンジンと痛むのです。特に、体重がかかる足の裏の痛みは強烈で、「靴の中に画鋲を敷き詰めて歩いているよう」「熱した砂利の上を裸足で歩いているみたい」などと表現されます。歩くことはおろか、ただ立っているだけで激痛が走り、トイレに行くことさえ困難になるほどです。靴下が触れるだけで痛みが走るため、外出もままなりません。手のひらの痛みも深刻で、物をつかむ、ドアノブを回す、スマートフォンの画面をタップするといった、日常の何気ない動作一つひとつが苦痛になります。次に、喉の痛みです。舌や頬の内側、喉の奥にできる多数の口内炎は、食事の時間を地獄に変えます。食べ物がしみる痛みはもちろん、唾を飲み込むことさえ、ためらわれるほどの激痛です。水分補給すら困難になり、脱水症状に陥る危険性もあります。これらの局所的な激痛に加えて、38度以上の高熱や、体中の節々が痛む関節痛、そして鉛のような全身の倦怠感が、数日間にわたって続きます。この多方面からの痛みの攻撃によって、心身ともに疲弊しきってしまうのです。大人の手足口病は、根性で乗り切れるものではありません。痛みがひどい場合は我慢せず、医療機関で痛み止めなどを処方してもらい、少しでも苦痛を和らげながら、嵐が過ぎ去るのを待つしかないのです。

  • 大人の手足口病。何科へ行きどう治す?

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    子供からうつったのか、あるいはどこかで感染したのか、原因はともあれ、大人が手足口病の症状に見舞われた時、そのつらさは想像を絶するものがあります。高熱、倦怠感、そして何より手足と喉の激痛。一刻も早くこの苦しみから解放されるためには、適切な医療機関を受診し、正しい対処法を知ることが重要です。まず、何科を受診すればよいのでしょうか。手足口病は、症状が全身にわたるため、迷うかもしれません。基本的には、まず「内科」を受診するのが一般的です。発熱や倦怠感といった全身症状を総合的に診てもらい、他の病気(インフルエンザなど)との鑑別を行ってもらえます。また、手のひらや足の裏の発疹が主な症状で、皮膚の状態を詳しく診てほしい場合は、「皮膚科」が良いでしょう。喉の痛みが特にひどく、口内炎の状態を専門的に診てほしい場合は、「耳鼻咽喉科」も選択肢となります。どの科を受診しても、手足口病の診断は比較的容易ですが、迷った場合は、まずはかかりつけの内科に相談するのがスムーズです。病院では、どのような治療が行われるのでしょうか。残念ながら、手足口病の原因であるエンテロウイルス属に直接効く「特効薬」は存在しません。そのため、治療は、つらい症状を和らげるための「対症療法」が中心となります。高熱や手足の強い痛みに対しては、「解熱鎮痛剤」(ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなど)が処方されます。喉の口内炎の痛みに対しては、炎症を抑えるスプレー薬や、粘膜を保護するうがい薬、あるいは痛みを和らげるための塗り薬などが処方されることもあります。しかし、治療の基本は、やはり「安静」と「水分補給」です。家庭でのセルフケアも非常に重要です。手足の痛みに対しては、保冷剤などで患部を冷やすと、痛みが少し和らぐことがあります。食事は、喉の痛みを刺激しないよう、おかゆやゼリー、プリン、冷たいスープなど、のどごしの良いものを選びましょう。そして、脱水を防ぐために、経口補水液やスポーツドリンクを、少量ずつこまめに摂取することを、何よりも優先してください。医療機関での対症療法と、自宅での丁寧なセルフケア。この二つを組み合わせることで、つらい治療期間を乗り切っていきましょう。

  • 頬の赤みとかゆみ。アトピー性皮膚炎の可能性

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    子供の頬が赤くなっているだけでなく、カサカサと乾燥し、強いかゆみを伴っている場合、それは単なる乾燥による肌荒れではなく、「アトピー性皮膚炎」のサインかもしれません。アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹を主な症状とする皮膚の病気で、多くは乳幼児期に発症します。その原因は、まだ完全には解明されていませんが、アレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)と、皮膚のバリア機能の低下が、複雑に絡み合って発症すると考えられています。アトピー性皮膚炎の赤ちゃんに最初に症状が現れやすい場所の一つが、「頬」や「口の周り」です。最初は、カサカサとした乾燥や、軽い赤みから始まります。しかし、かゆみが強いため、赤ちゃんは手でこすったり、寝具に顔をこすりつけたりして、掻き壊してしまいます。その結果、皮膚のバリア機能はさらに低下し、炎症が悪化。ジュクジュクとした浸出液が出たり、かさぶたができたりと、湿疹がどんどん悪化していくという悪循環に陥ります。頬だけでなく、おでこや頭、耳の周り、そして成長と共に、首や肘の内側、膝の裏側といった、関節の屈曲部に湿疹が広がっていくのも、アトピー性皮膚炎の特徴です。では、アトピー性皮膚炎が疑われたら、どうすればよいのでしょうか。まずは、自己判断で市販の薬を塗ったりせず、「小児科」または「皮膚科」を受診することが重要です。医師は、湿疹の状態や分布、家族のアレルギー歴などを総合的に判断して診断を下します。治療の基本は、三つの柱からなります。一つ目は、炎症を抑えるための「薬物療法」です。炎症の強さに応じて、ステロイド外用薬や、非ステロイド系の抗炎症薬、免疫抑制外用薬などが処方されます。医師の指示通りに、適切な量を、適切な期間使用することが、副作用を避け、効果的に炎症を抑えるための鍵です。二つ目は、低下した皮膚のバリア機能を補うための、徹底した「スキンケア(保湿)」です。薬を塗るだけでなく、一日数回、保湿剤を全身に塗ることで、乾燥を防ぎ、皮膚を刺激から守ります。三つ目は、皮膚の状態を悪化させる「悪化因子の検索と対策」です。汗や乾燥、食物アレルギー、ダニやホコリといった環境アレルゲンなど、その子にとっての悪化因子を見つけ出し、可能な限り避ける努力をします。

  • ある日突然地獄が。私の手足口病闘病記

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    先週まで、私は手足口病を完全に侮っていました。「子供がかかる、ちょっと発疹が出る夏風邪でしょ?」と。一週間前、保育園に通う息子が手足口病と診断されました。手のひらと足の裏にポツポツと発疹は出たものの、熱もなく、本人は至って元気。そんな姿を見ていたので、まさか自分がその数日後、地獄を味わうことになるとは夢にも思っていませんでした。始まりは、水曜の夜の悪寒でした。急に体中の節々が痛み出し、熱を測ると39度。インフルエンザかと思い、翌朝、内科を受診しました。しかし、検査は陰性。「夏風邪でしょう」と解熱剤を処方され、帰宅しました。その日の午後から、異変は本格化しました。ふと手のひらを見ると、見覚えのある赤い斑点が。足の裏、そして足の甲にも、それは瞬く間に広がっていきました。そして、夜には、それらが耐え難い痛みに変わったのです。足の裏は、まるで無数の針が突き刺さっているようで、一歩も歩けません。トイレに行くにも、四つん這いになって進むしかありませんでした。手のひらの痛みもひどく、スマートフォンの重ささえ苦痛でした。そして、喉の痛み。口の中は口内炎だらけで、水を含むだけで激痛が走り、食事はゼリー飲料を流し込むのがやっと。高熱と全身の痛み、そして眠れないほどの喉と手足の激痛。あまりのつらさに、情けなくも涙が出ました。金曜日に、皮膚科を再受診し、ようやく「大人の手足口病」という確定診断が下りました。特効薬はなく、ただひたすら痛み止めを飲み、嵐が過ぎるのを待つしかないとのこと。結局、痛みのピークは三日三晩続きました。週末を完全に寝たきりで過ごし、週が明けて、ようやく少しずつ痛みが和らいできた時には、心身ともに疲れ果てていました。子供の病気だと甘く見ていた自分を、心から殴ってやりたいです。もし、あなたの周りで大人が手足口病にかかったら、どうか「大変だね」と、その苦しみを理解してあげてください。それは、決して大げさではないのですから。

  • マイコプラズマ肺炎の診断。なぜ時間がかかることがあるのか

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    「咳と熱が長引いて、病院に行ったのに、すぐにはマイコプラズマ肺炎と診断されなかった」。そんな経験を持つ方もいるかもしれません。マイコプラズマ肺炎は、その診断がつくまでに、ある程度の時間が必要となることがあります。その理由は、この病気が持つ特徴と、診断に用いられる検査方法の特性にあります。まず、初期症状が、他の多くの呼吸器感染症、特に風邪や気管支炎と非常に似ていることが、診断を難しくする第一の要因です。乾いた咳や発熱、倦怠感といった症状だけでは、医師も最初は一般的な風邪症候群として対応することが多いのです。しかし、数日経っても症状が改善しない、あるいは咳が悪化していく、といった典型的な経過をたどることで、初めてマイコプラズマ肺炎の可能性が強く疑われ始めます。診断を確定させるためには、いくつかの検査が行われます。胸部レントゲン検査では、肺炎に特徴的な「淡いすりガラス状の影」が見られることがありますが、初期には変化が乏しいことも少なくありません。最も確実な診断法の一つが、血液検査でマイコプラズマに対する「抗体価」を測定する方法です。私たちの体は、マイコプラズマに感染すると、それに対抗するための抗体を作り出します。この抗体の量を測定することで、感染の有無を判断するのです。しかし、この抗体は、感染後すぐには上昇しません。感染初期(急性期)と、その2〜4週間後の回復期に、二度にわたって採血を行い、その間に抗体価が4倍以上に上昇していることを確認する「ペア血清」という方法が、最も信頼性の高い診断基準とされています。つまり、確定診断がつくまでには、数週間の時間が必要になるのです。もちろん、もっと迅速に診断するための検査もあります。喉の粘膜をこすって、マイコプラズマの遺伝子(DNA)を検出する「LAMP法」や、血液中の抗体の一種(IgM抗体)を測定する方法は、比較的早期に結果が出ます。しかし、これらの迅速検査も、常に100%正確というわけではありません。このような理由から、医師は、症状の経過、診察所見、そして各種検査の結果を、時間をかけて総合的に判断し、診断を下していくのです。治療は、確定診断を待たずに、疑いが強い段階で開始されることがほとんどです。

  • 線維筋痛症と間違われやすい他の病気

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    全身の広範囲にわたる痛みと、原因不明の倦怠感。線維筋痛症のこれらの症状は、非常に漠然としているため、他の様々な病気と症状が重なり、しばしば診断が困難になります。専門医は、線維筋痛症の診断を下す前に、これらの「似て非なる病気」の可能性を一つひとつ、慎重に除外していく必要があります。患者さん自身も、どのような病気が鑑別の対象となるのかを知っておくことは、病気の理解を深める上で役立ちます。まず、最も重要な鑑別疾患が「関節リウマチ」です。関節リウマチも、全身の関節に痛みやこわばりを引き起こしますが、最大の違いは「関節の腫れ(滑膜炎)」があることです。血液検査でリウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性となり、レントゲンや関節エコーで関節破壊の所見が見られるのが特徴です。線維筋痛症では、関節は痛くても、客観的な腫れや破壊は見られません。ただし、関節リウマチに線維筋痛症が合併することも少なくありません。次に、「多発性筋炎・皮膚筋炎」という膠原病も鑑別の対象となります。これは、筋肉そのものに炎症が起こる病気で、全身の筋力低下や筋肉痛が主な症状です。血液検査で、筋肉から漏れ出す酵素(CKなど)の著しい上昇が見られることで区別されます。また、甲状腺ホルモンの分泌が低下する「甲状腺機能低下症」も、全身の倦怠感や筋肉痛、気分の落ち込みといった、線維筋痛症とよく似た症状を引き起こします。これは、簡単な血液検査で甲状腺ホルモンの値を調べることで、容易に診断できます。慢性的な疲労感が主症状である「慢性疲労症候群」も、線維筋痛症と症状が非常に似ており、両者を合併しているケースも多いとされています。両者の区別は専門医でも難しい場合があります。さらに、ビタミンDの欠乏が、広範囲の骨や筋肉の痛みを引き起こすことも知られています。これも血液検査で確認することができます。その他、うつ病や、様々な神経系の疾患も、全身の痛みを引き起こすことがあります。このように、線維筋痛症の診断は、まるで探偵が証拠を集めていく作業に似ています。様々な可能性を検討し、一つずつ消去していく。この丁寧なプロセスを経て、初めて「線維筋痛症」という診断にたどり着くことができるのです。

  • 不安が尿意を呼ぶ?心因性頻尿との付き合い方

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    「大事な会議の前になると、必ずトイレに行きたくなる」「電車やバスに乗る前は、トイレに行っておかないと不安でたまらない」。特定の状況下で、急に、そして何度もトイレに行きたくなる。しかし、いざトイレに行っても、尿は少ししか出ない。このような症状に心当たりがあるなら、それは「心因性頻尿」かもしれません。心因性頻尿は、膀胱や尿道に器質的な異常がないにもかかわらず、心理的なストレスや不安が原因で、頻尿の症状が現れる状態です。私たちの排尿のメカニズムは、自律神経によってコントロールされています。強い不安や緊張を感じると、体を活動モードにする交感神経が活発になります。この交感神経の働きが、膀胱の筋肉に影響を与え、まだ尿が十分に溜まっていなくても、尿意を感じさせてしまうのです。さらに、このメカニズムには、「予期不安」という心理が、悪循環を生み出す大きな要因となります。一度、大事な場面でトイレに行きたくなって困った、という経験をすると、「また同じことになったらどうしよう」という強い不安が生まれます。この不安が、実際に次の尿意を引き起こし、そして、また「やっぱりダメだった」という失敗体験が、さらに次の不安を強めていく。この「不安→尿意→失敗体験→さらに強い不安」という負のスパイラルに陥ってしまうのが、心因性頻尿のつらいところです。この状態と上手に付き合っていくためには、どうすればよいのでしょうか。まず、大切なのは、「これは病気ではなく、誰にでも起こりうる、心の反応なのだ」と、過度に深刻に捉えすぎないことです。そして、泌尿器科を受診し、過活動膀胱など、他の身体的な病気がないことを確認してもらうと、大きな安心材料になります。その上で、いくつかの対処法を試してみましょう。一つは、「行動療法」です。例えば、「膀胱訓練」として、尿意を感じてもすぐにトイレに行かず、5分、10分と、少しずつ我慢する時間を延ばしていく練習をします。これにより、「自分は我慢できる」という成功体験を積み重ね、自信を取り戻していきます。また、深呼吸や、筋肉の緊張を意識的に緩める「筋弛緩法」、あるいは好きな音楽を聴くなど、自分なりの「リラクゼーション法」を見つけ、不安を感じた時に実践するのも有効です。

  • その肩こり、もしかして病気のサイン?

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    多くの人が経験する肩こりですが、そのほとんどは、長時間の同じ姿勢や運動不足による筋肉の疲労や血行不良が原因です。しかし、中には、単なる「こり」では済まされない、危険な病気が隠れているサインとしての肩こりも存在します。いつもの肩こりだと思い込んで放置していると、命に関わる事態に繋がりかねないケースもあるのです。いつもの肩こりとは違う、「危険な肩こり」を見分けるためのポイントを知っておきましょう。まず、整形外科領域の病気として注意が必要なのが、「頸椎椎間板ヘルニア」や「頸椎症」です。これらは、首の骨(頸椎)の変形や、骨と骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出すことで、腕へ行く神経が圧迫される病気です。この場合、肩こりに加えて、「腕や手のしびれ、痛み」「指先の感覚が鈍い」「手に力が入りにくい」といった、神経症状を伴うのが大きな特徴です。安静にしていても症状が改善しない場合は、整形外科での精密検査が必要です。次に、内科的な病気が原因で起こる肩こりです。特に注意したいのが「心臓の病気」、具体的には「狭心症」や「心筋梗塞」です。心臓への血流が悪くなることで起こる痛みが、肩や背中、顎の痛み(放散痛)として感じられることがあります。特に、左肩に集中する痛みや、階段を上るなど、体を動かした時に胸の圧迫感と共に肩が痛む場合は、危険なサインです。このような症状があれば、迷わず「循環器内科」を受診してください。また、高血圧も、首の後ろから肩にかけての張りや、頭痛を伴う肩こりの原因となることがあります。さらに、胆石や胆のう炎、膵炎といった「消化器の病気」でも、右肩に痛みが放散することが知られています。吐き気や腹痛を伴う場合は、「消化器内科」への相談が必要です。その他にも、うつ病などの「精神的なストレス」が、自律神経の乱れを通じて、筋肉の緊張を引き起こし、頑固な肩こりの原因となることもあります。「いつものこと」と片付けずに、肩こり以外の症状に目を向けること。それが、隠れた病気を見逃さないための重要な視点となります。

  • 女性に多い肩こり。婦人科やホルモンとの関係

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    肩こりは、男性よりも女性に多い悩みと言われています。その背景には、女性特有の体のつくりや、ライフステージにおけるホルモンバランスの変化が、深く関わっていると考えられています。一般的な肩こりの原因に加えて、女性ならではの視点を持つことが、つらい症状の解決のヒントになるかもしれません。まず、身体的な特徴として、女性は男性に比べて、首や肩周りの筋肉量が少なく、華奢なつくりをしています。それにもかかわらず、比較的重い頭(体重の約10%)を支えなければならないため、筋肉にかかる負担が大きく、疲労が蓄積しやすいのです。また、女性はバストの重みで、知らず知らずのうちに猫背になりがちです。この姿勢の悪さが、首や肩へのさらなる負担となり、肩こりを助長します。次に、見逃せないのが「女性ホルモン」の影響です。女性の体は、月経、妊娠、出産、そして更年期といった、ライフステージを通じて、女性ホルモン(特にエストロゲン)の分泌量がダイナミックに変動します。エストロゲンには、血管を拡張させ、血行を良くする働きがあります。そのため、エストロゲンの分泌量が減少する時期、例えば月経前や、特に更年期には、血行が悪化しやすくなり、肩こりをはじめとする体の様々な不調が現れやすくなるのです。更年期に、のぼせやほてり、イライラといった症状と共に、肩こりがひどくなった、という方は、このホルモンバランスの乱れが原因である可能性が高いでしょう。こうした女性特有の要因が関わる肩こりの場合、整形外科での治療と並行して、「婦人科」への相談が有効なことがあります。月経前の不調(PMS)が強い場合は、低用量ピルや漢方薬で症状が緩和されることもあります。また、更年期障害による肩こりに対しては、「ホルモン補充療法(HRT)」や、漢方薬、プラセンタ注射などが、著しい効果を示すことがあります。婦人科医は、女性の体をホルモンの観点から総合的に診る専門家です。もし、あなたの肩こりが、月経周期や、更年期といった、女性ならではのリズムと連動しているように感じるなら、一度、婦人科の扉を叩いてみるのも、症状改善への新たな道を開くきっかけになるかもしれません。