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整形外科だけじゃない。肩こりに関わる様々な診療科
つらい肩こりに悩まされ、整形外科を受診したものの、「骨には異常ありませんね」と言われ、湿布や痛み止めを処方されただけで、根本的な解決に至らなかった。そんな経験を持つ方もいるかもしれません。確かに、多くの肩こりは整形外科の領域ですが、その原因は非常に多岐にわたるため、他の診療科の専門知識が必要となるケースも少なくありません。肩こりの治療に関わる可能性のある、様々な診療科の役割を知っておきましょう。まず、前述の通り、基本となるのは「整形外科」です。骨格や筋肉の問題を診断し、物理療法や薬物療法を行います。しかし、肩こりに腕や手のしびれを伴う「頸椎椎間板ヘルニア」などが疑われ、より精密な検査(MRIなど)や、場合によっては手術が必要と判断された際には、より専門性の高い「脊椎外科」や「脳神経外科」へ紹介されることもあります。次に、内科系の診療科です。胸の痛みや圧迫感を伴う肩こりの場合は、心筋梗塞などの危険な心疾患を除外するために「循環器内科」の受診が最優先です。高血圧が原因と考えられる場合は、一般的な「内科」で血圧のコントロールを行います。また、膠原病の一種である「リウマチ性多発筋痛症」は、高齢者に多く、首や肩、太ももなどに、急な強い痛みとこわばりを引き起こします。この場合は、免疫の専門家である「リウマチ科・膠原病内科」が担当します。さらに、頑固な肩こりの背景に、精神的なストレスが大きく関わっていることも珍しくありません。ストレスによって自律神経が乱れ、常に筋肉が緊張状態になることで、肩こりを引き起こすのです。不眠や気分の落ち込み、不安感などを伴う場合は、「心療内科」や「精神科」への相談が有効です。抗不安薬や抗うつ薬の処方、あるいはカウンセリングなどを通じて、心の緊張をほぐすことが、結果的に肩こりの緩和に繋がります。また、痛みの治療を専門とする「ペインクリニック」も、有効な選択肢の一つです。ここでは、神経ブロック注射などを用いて、痛みの悪循環を断ち切るための専門的な治療を受けることができます。このように、一口に肩こりと言っても、その原因に応じて、様々な専門家が関わります。もし、一つの科で改善が見られない場合は、別の角度からアプローチしてくれる診療科の存在を思い出してください。
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喉の痛みや違和感。まず行くべき診療科は?
喉がイガイガする、飲み込む時に痛む、声がかすれる、あるいは何か詰まったような違和感が続く。こうした喉の不調は、誰もが一度は経験するありふれた症状です。しかし、いざ病院へ行こうと思った時、「この症状は、内科と耳鼻咽喉科、どちらに行けばいいのだろう?」と迷ってしまう方は少なくありません。風邪の一種だから内科?それとも、喉の専門家である耳鼻咽喉科?この最初の診療科選びは、的確な診断とスムーズな治療への第一歩として重要です。結論から言うと、喉の痛みや違和感といった「喉そのもの」の症状がメインである場合は、まず「耳鼻咽喉科」を受診することをお勧めします。耳鼻咽喉科は、その名の通り、耳・鼻・喉(のど)を専門とする診療科です。医師は、喉頭鏡やファイバースコープといった専門的な器具を用いて、肉眼では見えない喉の奥、声帯、あるいは鼻の奥の状態まで、直接、詳細に観察することができます。そのため、単なる風邪による咽頭炎なのか、あるいは細菌感染による扁桃炎なのか、声帯にポリープができているのか、アレルギー反応によるものなのか、といった原因を正確に診断することが可能です。特に、「声がれが長引く」「飲み込みにくい感じがする」「片側だけの喉の痛みが続く」といった症状の場合は、内科では診断が難しい喉の奥の病気が隠れている可能性もあるため、耳鼻咽喉科での診察が不可欠です。もちろん、「内科」を受診することが間違いというわけではありません。喉の痛みに加えて、咳や痰、鼻水、そして発熱や全身の倦怠感といった、いわゆる「風邪症状」が全体的に強い場合は、全身を総合的に診てくれる内科も適切な選択肢です。しかし、もし内科での治療を受けても、喉の症状だけがなかなか改善しない、という場合には、改めて耳鼻咽喉科を受診し、専門的な視点から診てもらうのが良いでしょう。迷ったら、喉の専門家である耳鼻咽喉科へ。それが、つらい喉の不調を的確に解決するための、最も確実な近道です。
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手足口病の後遺症?爪が剥がれる原因と対処
手足口病の嵐のような症状、高熱や激痛がようやく治まり、日常生活に戻れるようになった数週間後。ふと自分の指先を見ると、爪に白い横線が入っていたり、根元から浮き上がってきたりしている。中には、爪が完全に剥がれ落ちてしまうことも。このような現象に遭遇すると、「何か悪い後遺症なのでは?」と、新たな不安に駆られるかもしれません。しかし、安心してください。これは「爪甲脱落症(そうこうだつらくしょう)」と呼ばれる、手足口病の回復期によく見られる現象であり、過度に心配する必要はありません。では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。爪は、指の根元にある「爪母(そうぼ)」という部分で作られています。爪母が、日々、新しい爪の細胞を作り出すことで、爪は少しずつ前に伸びていきます。しかし、手足口病にかかると、高熱や体内の強い炎症、あるいは栄養状態の悪化といった、体にとっての大きなストレスが、この爪母の働きを一時的に「ストップ」させてしまうことがあるのです。爪の工場が、数日間、操業を停止してしまうようなイメージです。病気が回復し、体の状態が元に戻ると、爪母は再び爪の生産を再開します。その結果、一時的に生産が止まっていた部分と、新たに作られ始めた部分との間に、溝や断層ができてしまいます。この断層が、爪が伸びるにつれて、白い横線として見えたり、爪が浮き上がったり、最終的には古い爪が剥がれ落ちる、という形で現れるのです。この現象は、手足口病を発症してから、約1〜2ヶ月後に見られることが多く、手の爪だけでなく、足の爪にも起こります。爪が剥がれる際に、痛みはほとんどありません。大切なのは、剥がれかけている爪を、無理に引っ張ったり、剥がしたりしないことです。無理に剥がすと、下にある柔らかい皮膚を傷つけてしまう可能性があります。爪切りで引っかからないように短く切り、絆創膏などで保護しながら、自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。その下には、すでに新しい健康な爪がちゃんと育っています。この爪のトラブルは、体が大きな病気を乗り越えた「勲章」のようなもの。焦らず、新しい爪が生え揃うのを待ちましょう。
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その赤み、食べ物が原因かも?食物アレルギーと頬の湿疹
離乳食が始まったばかりの赤ちゃんや、色々な食べ物を口にするようになった幼児の頬に、赤い湿疹やかぶれのような症状が出た時、それは「食物アレルギー」が原因である可能性を考える必要があります。食物アレルギーとは、特定の食べ物に含まれるタンパク質を、体が「異物」と認識し、それを排除しようと免疫システムが過剰に反応することで起こるアレルギー反応です。その症状は、じんましんや咳、呼吸困難といった即時型のものだけでなく、湿疹やかゆみといった、皮膚に現れる遅延型のものもあります。特に、乳幼児期に多いのが、口の周りや頬に現れる湿疹です。原因となる食べ物が、口の周りの皮膚に直接触れることによる「接触性皮膚炎」と、食べたものが体内に吸収されてアレルギー反応を起こし、皮膚に症状が出る場合があります。例えば、卵や乳製品、小麦といったアレルギーを起こしやすい食品を初めて食べた後や、トマトや柑橘類、キウイフルーツなどの、口の周りに付着すると刺激になりやすいものを食べた後に、口の周りや頬が赤くなったり、ブツブツとした湿疹が出たりすることがあります。よだれが多い時期には、よだれと食べ物のカスが混じり合って、さらに皮膚への刺激が強くなることも少なくありません。もし、特定の食べ物を食べた後に、決まって頬が赤くなる、というパターンが見られる場合は、食物アレルギーの可能性を疑ってみる必要があります。家庭でできる対処法としては、まず、食事の前後には、口の周りを濡れたガーゼで優しく拭き取り、清潔に保つことです。そして、食後には、ワセリンなどの保護効果の高い軟膏を口の周りに塗って、皮膚を刺激から守ってあげるのも有効です。しかし、自己判断で特定の食品を完全に除去するのは避けるべきです。不必要な食物除去は、子供の成長に必要な栄養を妨げることにもなりかねません。食物アレルギーが疑われる場合は、必ず「小児科」や「アレルギー科」を受診し、専門医に相談しましょう。医師は、詳しい問診や、皮膚テスト、血液検査などを行い、原因となる食物を特定します。そして、専門家の指導のもと、安全な範囲で、どのようにその食品と付き合っていくかを計画していくことが、最も重要です。
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肩こりの治療。病院で行われることとは
つらい肩こりに耐えかねて、意を決して整形外科などの病院を受診した場合、具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。病院での治療は、その場の痛みを和らげる対症療法と、根本的な原因にアプローチする原因療法を組み合わせて行われるのが一般的です。まず、痛みが強い場合には、症状を緩和するための「薬物療法」が行われます。最も一般的に処方されるのが、「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)」です。炎症を抑え、痛みを和らげる効果があり、飲み薬だけでなく、湿布や塗り薬といった外用薬もよく用いられます。外用薬は、直接患部に作用するため、全身への副作用が少なく、気軽に使用できるのがメリットです。また、筋肉の過度な緊張が原因である場合には、筋肉のこわばりを和らげる「筋弛緩薬」が処方されることもあります。次に、薬物療法と並行して行われるのが「物理療法」です。これは、電気や温熱、牽引といった物理的なエネルギーを利用して、痛みの緩和や血行の改善を図る治療法です。代表的なものに、首をゆっくりと引っ張ることで、頸椎の間隔を広げ、神経への圧迫を和らげる「頸椎牽引療法」や、低周波や干渉波といった電気刺激を筋肉に与えることで、血行を促進し、痛みを和らげる「電気治療」、ホットパックなどで患部を温める「温熱療法」などがあります。これらの物理療法は、リハビリテーション室などで、理学療法士の指導のもとに行われます。さらに、痛みが局所的で、特に強い場合には、「ブロック注射」という選択肢もあります。これは、痛みの原因となっている神経の近くや、筋肉の硬結(トリガーポイント)に、局所麻酔薬やステロイド薬を直接注射することで、痛みの伝達をブロックし、強力に症状を抑える治療法です。ペインクリニックなどで専門的に行われることが多いです。そして、これらの治療と並行して、最も重要となるのが「運動療法(リハビリテーション)」です。理学療法士などの専門家が、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、ストレッチや筋力トレーニングの方法を指導します。正しい姿勢の取り方や、日常生活での注意点についてのアドバイスも行われます。病院での治療は、単に薬をもらったり、機械にかかったりするだけでなく、自分自身の体と向き合い、生活習慣を改善していくきっかけを与えてくれる場所でもあるのです。
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その赤み、りんご病じゃないかも?考えられる原因
子供のほっぺが、まるでりんごのように真っ赤になっていると、多くの親がまず「りんご病(伝染性紅斑)」を疑うでしょう。確かに、りんご病は子供のほっぺが赤くなる代表的な病気ですが、実は、その原因は一つではありません。りんご病以外の様々な要因でも、子供の頬は赤くなることがあります。他の病気の可能性や、日常的な原因を知っておくことは、不必要な心配を避け、適切な対処に繋がります。まず、りんご病以外の原因として最も考えられるのが、「皮膚の乾燥と刺激」です。子供の皮膚は、大人に比べて非常に薄くデリケートで、バリア機能も未熟です。特に、冬場の乾燥した空気や、冷たい外気、暖房の効いた室内といった環境は、皮膚の水分を奪い、乾燥させます。乾燥した皮膚は、外部からのわずかな刺激にも敏感に反応し、炎症を起こして赤くなりやすいのです。よだれや、食べこぼし、涙などを拭き取る際の摩擦も、赤みの原因となります。次に、アレルギー反応の可能性も考えられます。「食物アレルギー」で、特定の食べ物を食べた後に頬が赤くなったり、「接触皮膚炎(かぶれ)」で、化粧品や金属、植物などが触れた部分が赤くなったりすることがあります。また、「アトピー性皮膚炎」の症状の一つとして、頬に赤みや湿疹が現れることも少なくありません。さらに、ウイルス感染症の中にも、頬の赤みを伴うものがあります。例えば、「溶連菌感染症」では、喉の痛みや発熱と共に、顔や体に細かい赤い発疹が出ることがあり、頬が赤く見えることがあります。また、稀ではありますが、膠原病の一種である「全身性エリテマトーデス(SLE)」では、鼻から両頬にかけて蝶が羽を広げたような形の赤い発疹(蝶形紅斑)が現れることがあります。その他にも、単純に、寒い場所から暖かい部屋に入った時の「寒暖差」による一時的な血管の拡張や、興奮したり、泣いたりした時にも、血行が良くなって頬は赤くなります。このように、子供の頬が赤くなる原因は多岐にわたります。赤み以外の症状(熱、かゆみ、湿疹の有無など)をよく観察し、原因に応じた適切なケアをすることが大切です。
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喉の違和感、つまった感じ。その正体は?
「喉に、何かボールのようなものが詰まっている感じがする」「常に何かが張り付いているようで、咳払いをしても取れない」。このような、痛みはないけれど、不快な「喉の違和感」や「詰まり感(閉塞感)」に、長期間悩まされている方は少なくありません。病院で診てもらっても、「特に異常はありません」と言われ、途方に暮れてしまうことも。この正体不明の症状は、「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」、あるいは「ヒステリー球」とも呼ばれ、その原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。まず、考えられるのが「局所的な炎症」です。慢性的な副鼻腔炎(蓄膿症)によって、鼻水が喉の奥に流れ落ちる「後鼻漏(こうびろう)」や、胃酸が食道へ逆流する「逆流性食道炎」によって、喉の粘膜が常に刺激され、慢性的な炎症が起こることで、違和感が生じることがあります。これらは、耳鼻咽喉科や消化器内科での治療によって、症状が改善します。また、アレルギー性鼻炎や、喘息の一種である咳喘息が、喉のイガイガ感や違和感として感じられることもあります。次に、喉そのものには異常がなくても、首の周りの筋肉の過度な緊張が、喉の圧迫感として感じられることもあります。長時間のデスクワークによる姿勢の悪さや、ストレスによる食いしばりなどが、原因となることがあります。そして、これらの身体的な要因が見当たらない場合に、大きく関わってくるのが「心理的な要因」です。咽喉頭異常感症は、不安や抑うつといった、精神的なストレスと深く関連していることが知られています。強いストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、喉の筋肉が異常に収縮したり、感覚が過敏になったりして、実際には何もないのに、「何かが詰まっている」という感覚が生じてしまうのです。「自分は喉のがんなのではないか」という強い不安(がん恐怖症)が、さらに症状を悪化させるという悪循環に陥ることもあります。この症状で悩んだら、まずは耳鼻咽喉科を受診し、ファイバースコープなどで、喉にがんなどの器質的な異常がないことを、しっかりと確認してもらうことが第一歩です。異常がないと分かるだけで、安心感から症状が軽くなる方もいます。その上で、原因に応じて、生活習慣の改善や、漢方薬、あるいは心療内科と連携した治療などを、検討していくことになります。
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大人がかかる手足口病。子供との違いとは?
手足口病は、夏を中心に子供たちの間で流行する感染症として広く知られています。しかし、「子供の病気」というイメージが強いこの病気、実は免疫がなければ大人も感染します。そして、大人が手足口病にかかった場合、その症状は子供のケースとは比較にならないほど重く、つらいものになることが多いのです。その違いを知っておくことは、適切な対処と心の準備のために非常に重要です。まず、最大の違いは「症状の強さ」、特に「痛み」です。子供の場合、手足の発疹にかゆみを伴うことはあっても、強い痛みを訴えることは比較的稀です。しかし、大人が発症すると、手のひらや足の裏にできた水疱性の発疹に、針で刺されるような、あるいは熱した鉄板の上を歩いているような、耐え難いほどの激痛を伴います。歩行が困難になり、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。また、口の中にできる口内炎も、子供より広範囲に、そして深くできる傾向があり、食事や水分を摂ることさえ困難になるほどの激痛を引き起こします。次に、全身症状も重く出がちです。子供の場合は熱が出ないこともありますが、大人の場合は38度以上の高熱が出ることが多く、それに伴う強い倦怠感や悪寒、関節痛に悩まされます。まるでインフルエンザにかかったかのような、全身的な消耗が特徴です。なぜ、大人はこれほど重症化しやすいのでしょうか。その明確な理由はまだ解明されていませんが、子供に比べて成熟した免疫システムが、ウイルスに対してより激しく反応するためではないか、と考えられています。特効薬はなく、治療は痛み止めや口内炎の薬など、症状を和らげる対症療法が中心となります。もし、子供からうつったかもしれない、あるいは原因不明の発疹と高熱に見舞われた時は、「たかが子供の風邪」と侮らず、内科や皮膚科を受診し、十分な休養をとることが何よりも大切です。
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赤い頬に潜む病気。溶連菌感染症と川崎病
子供の頬の赤みは、そのほとんどが心配のない一過性のものや、りんご病のような比較的軽い感染症が原因です。しかし、ごく稀に、その赤みが、早期の診断と治療が必要な、より重篤な病気のサインである可能性も、頭の片隅に入れておく必要があります。特に、保護者が知っておくべき代表的な病気が、「溶連菌感染症」と「川崎病」です。まず、「溶連菌感染症」です。これは、溶連菌という細菌によって引き起こされる感染症で、主な症状は38度以上の高熱と、喉の激しい痛み、そして舌がイチゴのように赤くブツブツになる「イチゴ舌」です。この全身症状と共に、皮膚にも特徴的な発疹が現れます。体や手足に、細かい砂粒のような、触るとザラザラした感じの赤い発疹(猩紅熱様発疹)が広がり、それに伴って、顔全体、特に頬が赤く見えることがあります。ただし、口の周りだけは白く抜けて見えるのが特徴的です。溶連菌感染症は、放置するとリウマチ熱や急性糸球体腎炎といった、心臓や腎臓の合併症を引き起こすリスクがあるため、抗菌薬による確実な治療が必要です。次に、より注意が必要なのが「川崎病」です。これは、主に4歳以下の乳幼児に起こる、原因不明の病気で、全身の血管に炎症が起こります。川崎病の診断は、主要な6つの症状のうち、5つ以上を満たすことで下されます。その症状とは、①5日以上続く高熱、②両眼の結膜の充血、③唇が真っ赤になったり、舌がイチゴ状になったりする口の変化、④体に現れる不定形の発疹、⑤手足の腫れや、指先の皮むけ、そして⑥首のリンパ節の腫れ、です。この時、体に現れる発疹の一環として、頬が赤くなることがあります。川崎病が最も怖いのは、心臓に栄養を送る重要な血管である「冠動脈」に炎症が及び、血管がこぶのように膨らむ「冠動脈瘤」という合併症を引き起こす可能性があることです。この合併症は、将来の心筋梗塞などの原因となるため、早期に診断し、免疫グロブリン大量療法などの専門的な治療を開始することが極めて重要です。もし、子供の頬の赤みに加えて、長引く高熱や、目の充血、唇の赤みといった、これらの特徴的な症状が複数見られる場合は、ただちに小児科、できれば入院施設のある総合病院を受診してください。
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声がれが治らない。それは声帯のSOSかも
飲み会で騒いだ後や、カラオケで歌いすぎた後などに、一時的に声がかすれるのは、誰にでも経験があることです。しかし、特に思い当たる原因もないのに、声がれ(医学的には「嗄声(させい)」と呼ばれます)が2週間以上も続く場合、それは単なる声の使いすぎではなく、声を出すための重要な器官である「声帯」に、何らかの異常が起きているサインかもしれません。声がれの原因は様々ですが、その多くは、左右一対のヒダである声帯そのものに問題が生じています。声帯は、呼吸する時には開き、声を出す時には閉じて、肺からの呼気で細かく振動することで音(原音)を生み出しています。この声帯の振動が、何らかの原因で妨げられると、声がかすれたり、出にくくなったりするのです。長引く声がれの原因として、まず考えられるのが「声帯ポリープ」や「声帯結節」です。これらは、声の酷使によって、声帯の粘膜に負担がかかり、血豆のようなポリープや、ペンだこのように硬くなる結節ができる病気です。教師や歌手など、声を職業とする人に多く見られます。次に、風邪のウイルスなどが原因で、声帯に炎症が起こる「急性喉頭炎」や、その炎症が慢性化した「慢性喉頭炎」も、声がれの一般的な原因です。喫煙は、慢性的な声帯の炎症を引き起こす最大の要因となります。また、見逃してはならないのが、「声帯麻痺」です。これは、声帯を動かす神経(反回神経)が、何らかの原因で麻痺してしまう病気です。甲状腺がんや、肺がん、食道がん、大動脈瘤といった、首や胸の病気が神経を圧迫することで起こることがあり、声がれが、これらの重篤な病気を発見するきっかけになることもあります。そして、最も注意が必要なのが「喉頭がん」です。特に、喫煙歴の長い中高年の男性で、進行性の声がれが続く場合は、この病気の可能性を常に念頭に置く必要があります。これらの病気は、いずれも、耳鼻咽痕科でファイバースコープを使えば、比較的容易に診断がつきます。たかが声がれと侮らず、2週間以上続く場合は、必ず専門医の診察を受けるようにしましょう。