あれは、二月の寒い日のことでした。朝起きると、喉に軽いイガイガ感がありました。いつもの風邪のひき始めだろうと、うがい薬でうがいをし、のど飴をなめながら、普通に仕事へ向かいました。しかし、その日の午後から、状況は一変しました。喉の痛みは、イガイガ感から、明らかに「激痛」へと変わっていったのです。特につばを飲み込むと、喉の奥にガラスの破片でも刺さっているかのような、鋭い痛みが走ります。夜には、熱も38度を超え、体中の節々が痛み始めました。これはただの風邪ではない、と直感しました。翌朝、鏡で喉の奥を見てみると、自分でも驚くほどの光景が広がっていました。左右の扁桃腺は、見たこともないくらい真っ赤に腫れ上がり、表面には、まるでカッテージチーズのような、白い膿がびっしりと付着していたのです。これはもう、市販薬でどうにかなるレベルではない。そう判断した私は、すぐに近所の耳鼻咽喉科に予約を入れました。診察室で口を開けると、医師は一目見るなり、「ああ、これはひどい扁桃炎ですね。溶連菌の検査をしましょう」と言い、長い綿棒で喉をこすられました。結果は、やはり陽性。「急性化膿性扁桃炎」、いわゆる溶連菌感染症でした。医師からは、抗菌薬と、強い痛み止めの薬が処方されました。「この薬を飲めば、明日にはだいぶ楽になりますよ。でも、合併症を防ぐために、10日間、必ず全部飲み切ってくださいね」と、強く念を押されました。その言葉通り、薬を飲み始めてからというもの、あれほどひどかった喉の激痛と高熱は、翌日には嘘のように和らいでいきました。あの時、自己判断で「風邪だろう」と様子を見ていたら、もっと症状が悪化し、入院が必要な「扁桃о周囲膿瘍」などに進展していたかもしれません。喉の尋常ではない痛みと、目に見える異常は、体からの緊急事態を知らせる重要なサインなのだと、この経験を通して痛感しました。そして、やはり「餅は餅屋」、喉のトラブルは、喉の専門家である耳鼻咽喉科に診てもらうのが一番だと、心から実感した出来事でした。