手足口病の嵐のような症状、高熱や激痛がようやく治まり、日常生活に戻れるようになった数週間後。ふと自分の指先を見ると、爪に白い横線が入っていたり、根元から浮き上がってきたりしている。中には、爪が完全に剥がれ落ちてしまうことも。このような現象に遭遇すると、「何か悪い後遺症なのでは?」と、新たな不安に駆られるかもしれません。しかし、安心してください。これは「爪甲脱落症(そうこうだつらくしょう)」と呼ばれる、手足口病の回復期によく見られる現象であり、過度に心配する必要はありません。では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。爪は、指の根元にある「爪母(そうぼ)」という部分で作られています。爪母が、日々、新しい爪の細胞を作り出すことで、爪は少しずつ前に伸びていきます。しかし、手足口病にかかると、高熱や体内の強い炎症、あるいは栄養状態の悪化といった、体にとっての大きなストレスが、この爪母の働きを一時的に「ストップ」させてしまうことがあるのです。爪の工場が、数日間、操業を停止してしまうようなイメージです。病気が回復し、体の状態が元に戻ると、爪母は再び爪の生産を再開します。その結果、一時的に生産が止まっていた部分と、新たに作られ始めた部分との間に、溝や断層ができてしまいます。この断層が、爪が伸びるにつれて、白い横線として見えたり、爪が浮き上がったり、最終的には古い爪が剥がれ落ちる、という形で現れるのです。この現象は、手足口病を発症してから、約1〜2ヶ月後に見られることが多く、手の爪だけでなく、足の爪にも起こります。爪が剥がれる際に、痛みはほとんどありません。大切なのは、剥がれかけている爪を、無理に引っ張ったり、剥がしたりしないことです。無理に剥がすと、下にある柔らかい皮膚を傷つけてしまう可能性があります。爪切りで引っかからないように短く切り、絆創膏などで保護しながら、自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。その下には、すでに新しい健康な爪がちゃんと育っています。この爪のトラブルは、体が大きな病気を乗り越えた「勲章」のようなもの。焦らず、新しい爪が生え揃うのを待ちましょう。
手足口病の後遺症?爪が剥がれる原因と対処