飲み会で騒いだ後や、カラオケで歌いすぎた後などに、一時的に声がかすれるのは、誰にでも経験があることです。しかし、特に思い当たる原因もないのに、声がれ(医学的には「嗄声(させい)」と呼ばれます)が2週間以上も続く場合、それは単なる声の使いすぎではなく、声を出すための重要な器官である「声帯」に、何らかの異常が起きているサインかもしれません。声がれの原因は様々ですが、その多くは、左右一対のヒダである声帯そのものに問題が生じています。声帯は、呼吸する時には開き、声を出す時には閉じて、肺からの呼気で細かく振動することで音(原音)を生み出しています。この声帯の振動が、何らかの原因で妨げられると、声がかすれたり、出にくくなったりするのです。長引く声がれの原因として、まず考えられるのが「声帯ポリープ」や「声帯結節」です。これらは、声の酷使によって、声帯の粘膜に負担がかかり、血豆のようなポリープや、ペンだこのように硬くなる結節ができる病気です。教師や歌手など、声を職業とする人に多く見られます。次に、風邪のウイルスなどが原因で、声帯に炎症が起こる「急性喉頭炎」や、その炎症が慢性化した「慢性喉頭炎」も、声がれの一般的な原因です。喫煙は、慢性的な声帯の炎症を引き起こす最大の要因となります。また、見逃してはならないのが、「声帯麻痺」です。これは、声帯を動かす神経(反回神経)が、何らかの原因で麻痺してしまう病気です。甲状腺がんや、肺がん、食道がん、大動脈瘤といった、首や胸の病気が神経を圧迫することで起こることがあり、声がれが、これらの重篤な病気を発見するきっかけになることもあります。そして、最も注意が必要なのが「喉頭がん」です。特に、喫煙歴の長い中高年の男性で、進行性の声がれが続く場合は、この病気の可能性を常に念頭に置く必要があります。これらの病気は、いずれも、耳鼻咽痕科でファイバースコープを使えば、比較的容易に診断がつきます。たかが声がれと侮らず、2週間以上続く場合は、必ず専門医の診察を受けるようにしましょう。
声がれが治らない。それは声帯のSOSかも