一ヶ月ほど前から、舌の左側面が、常にヒリヒリと痛むようになりました。鏡で見ても、特に口内炎ができているわけでもなく、赤くなっているようにも見えません。しかし、食事の時や、ふとした時に、舌がその部分に触れると、擦り傷のような、鋭い痛みが走るのです。最初は、うっかり舌を噛んでしまったのだろう、くらいに考えていました。しかし、一週間たっても、二週間たっても、痛みは一向に引きません。むしろ、常に同じ場所が痛むことで、だんだんと「何か悪いものでもできているのではないか」という不安が募っていきました。耳鼻咽喉科を受診し、ファイバースコープで診てもらいましたが、「特に異常は見当たりませんね。舌痛症かもしれません」と言われ、うがい薬を処方されただけでした。しかし、私には、痛みが常に同じ場所に限定されていることが、どうしても気になっていました。そんな時、ふと、舌で口の中を探ってみると、痛む部分にちょうど当たる、左下の奥歯に、少し欠けて尖った部分があることに気づきました。もしかして、これが原因なのでは?そう思い至った私は、すぐにかかりつけの「歯科」に予約を入れました。歯科医に事情を話し、口の中を診てもらうと、やはり、私の推測は当たりでした。数年前に治療した銀歯の一部が、少しだけ欠けて鋭利な突起となっており、私が喋ったり、食事をしたりするたびに、その尖った部分が、舌の同じ場所を、繰り返し、繰り返し、刺激し続けていたのです。いわば、ヤスリで常に舌をこすっているような状態でした。目に見える大きな傷にはなっていませんでしたが、粘膜の表面は、微細な傷でかなり荒れていたようです。治療は、驚くほど簡単でした。歯科医が、その尖った部分を、専用の器具で丸く削り、滑らかに研磨してくれただけです。時間にして、わずか数分。すると、どうでしょう。あれほど一ヶ月も私を悩ませてきた、舌のヒリヒリとした痛みが、その日のうちに、嘘のように軽減したのです。数日後には、痛みは完全に消え去りました。この経験を通して、私は、舌の痛みの原因が、必ずしも舌そのものにあるとは限らない、ということを学びました。合わない入れ歯や、治療した歯の詰め物、あるいは自分の歯並びそのものが、知らず知らずのうちに、デリケートな舌を傷つけていることがあるのです。