大人が手足口病と診断された時、体のつらさと共に、頭を悩ませるのが「仕事」の問題です。「会社は休むべきなのか」「いつから復帰できるのか」「周りにどう説明すればいいのか」。社会人ならではの、現実的な悩みがのしかかります。まず、法的な観点から言うと、手足口病は、インフルエンザのように「学校保健安全法」で明確な出席停止期間が定められている感染症ではありません。そのため、会社を休む法的な義務はありません。しかし、だからといって、無理して出勤することが推奨されるわけでは、決してありません。むしろ、症状の重さを考えれば、休養を取ることが、本人にとっても、職場にとっても、最善の選択と言えるでしょう。休むべき最大の理由は、その「症状のつらさ」にあります。前述の通り、大人の手足口病は、高熱や強い倦怠感、そして何より、歩行困難になるほどの足の裏の激痛を伴います。デスクワークであっても、通勤すること自体が困難であり、席に座っているだけで精一杯という状態では、仕事のパフォーマンスは著しく低下します。無理をすれば、回復が遅れるだけでなく、思わぬ事故に繋がるリスクさえあります。また、「感染拡大防止」という観点からの配慮も必要です。感染力は、有効な治療薬がないため、自身の免疫力でウイルスが抑制されるまで続きます。特に、咳などの症状がある場合は、飛沫感染のリスクがあります。満員電車での通勤や、オフィスという閉鎖された空間で、感染を広げてしまう可能性は否定できません。では、仕事復帰の目安はいつ頃でしょうか。これも明確な基準はありませんが、一般的には、まず「解熱していること」が第一条件です。そして、手足の強い痛みが和らぎ、少なくとも「自力で無理なく歩行できる」状態になっていること。さらに、食事がある程度摂れ、全身の倦怠感が改善していることが望ましいでしょう。多くの人は、発症から3〜5日程度で症状のピークを越え、1週間ほどで社会復帰が可能になることが多いようです。職場には、手足口病と診断されたこと、そして子供とは異なり、大人は症状が重く、歩行困難などの強い症状があることを正直に伝え、理解を求めることが大切です。自分の体を守り、周囲へ配慮するためにも、無理は禁物です。