多くの人が経験する肩こりですが、そのほとんどは、長時間の同じ姿勢や運動不足による筋肉の疲労や血行不良が原因です。しかし、中には、単なる「こり」では済まされない、危険な病気が隠れているサインとしての肩こりも存在します。いつもの肩こりだと思い込んで放置していると、命に関わる事態に繋がりかねないケースもあるのです。いつもの肩こりとは違う、「危険な肩こり」を見分けるためのポイントを知っておきましょう。まず、整形外科領域の病気として注意が必要なのが、「頸椎椎間板ヘルニア」や「頸椎症」です。これらは、首の骨(頸椎)の変形や、骨と骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出すことで、腕へ行く神経が圧迫される病気です。この場合、肩こりに加えて、「腕や手のしびれ、痛み」「指先の感覚が鈍い」「手に力が入りにくい」といった、神経症状を伴うのが大きな特徴です。安静にしていても症状が改善しない場合は、整形外科での精密検査が必要です。次に、内科的な病気が原因で起こる肩こりです。特に注意したいのが「心臓の病気」、具体的には「狭心症」や「心筋梗塞」です。心臓への血流が悪くなることで起こる痛みが、肩や背中、顎の痛み(放散痛)として感じられることがあります。特に、左肩に集中する痛みや、階段を上るなど、体を動かした時に胸の圧迫感と共に肩が痛む場合は、危険なサインです。このような症状があれば、迷わず「循環器内科」を受診してください。また、高血圧も、首の後ろから肩にかけての張りや、頭痛を伴う肩こりの原因となることがあります。さらに、胆石や胆のう炎、膵炎といった「消化器の病気」でも、右肩に痛みが放散することが知られています。吐き気や腹痛を伴う場合は、「消化器内科」への相談が必要です。その他にも、うつ病などの「精神的なストレス」が、自律神経の乱れを通じて、筋肉の緊張を引き起こし、頑固な肩こりの原因となることもあります。「いつものこと」と片付けずに、肩こり以外の症状に目を向けること。それが、隠れた病気を見逃さないための重要な視点となります。