肩こりは、男性よりも女性に多い悩みと言われています。その背景には、女性特有の体のつくりや、ライフステージにおけるホルモンバランスの変化が、深く関わっていると考えられています。一般的な肩こりの原因に加えて、女性ならではの視点を持つことが、つらい症状の解決のヒントになるかもしれません。まず、身体的な特徴として、女性は男性に比べて、首や肩周りの筋肉量が少なく、華奢なつくりをしています。それにもかかわらず、比較的重い頭(体重の約10%)を支えなければならないため、筋肉にかかる負担が大きく、疲労が蓄積しやすいのです。また、女性はバストの重みで、知らず知らずのうちに猫背になりがちです。この姿勢の悪さが、首や肩へのさらなる負担となり、肩こりを助長します。次に、見逃せないのが「女性ホルモン」の影響です。女性の体は、月経、妊娠、出産、そして更年期といった、ライフステージを通じて、女性ホルモン(特にエストロゲン)の分泌量がダイナミックに変動します。エストロゲンには、血管を拡張させ、血行を良くする働きがあります。そのため、エストロゲンの分泌量が減少する時期、例えば月経前や、特に更年期には、血行が悪化しやすくなり、肩こりをはじめとする体の様々な不調が現れやすくなるのです。更年期に、のぼせやほてり、イライラといった症状と共に、肩こりがひどくなった、という方は、このホルモンバランスの乱れが原因である可能性が高いでしょう。こうした女性特有の要因が関わる肩こりの場合、整形外科での治療と並行して、「婦人科」への相談が有効なことがあります。月経前の不調(PMS)が強い場合は、低用量ピルや漢方薬で症状が緩和されることもあります。また、更年期障害による肩こりに対しては、「ホルモン補充療法(HRT)」や、漢方薬、プラセンタ注射などが、著しい効果を示すことがあります。婦人科医は、女性の体をホルモンの観点から総合的に診る専門家です。もし、あなたの肩こりが、月経周期や、更年期といった、女性ならではのリズムと連動しているように感じるなら、一度、婦人科の扉を叩いてみるのも、症状改善への新たな道を開くきっかけになるかもしれません。