夏の保育園や幼稚園で、手足口病の流行が始まると、小さなお子さんを持つ親御さんは、我が子の心配と同時に、「自分にもうつるのではないか」という不安を感じるかもしれません。その不安は、残念ながら的を射ています。大人の手足口病の感染経路として、最も多いのが「子供からの家庭内感染」だからです。子供は回復したのに、今度はお父さんやお母さんがダウンしてしまう、というケースは後を絶ちません。しかし、感染経路と正しい対策を知っておけば、そのリスクを大幅に減らすことは可能です。手足口病の原因となるウイルスは、主に「飛沫感染」と「接触感染」によって広がります。そして、ウイルスは、感染者の咳やくしゃみなどの気道分泌物だけでなく、「便」の中にも大量に排出される、という非常にやっかいな特徴を持っています。特に、症状が治まった後も、数週間にわたって便からのウイルス排出が続くため、注意が必要です。家庭内での感染を防ぐための最大のポイントは、「オムツ交換後の徹底した手洗い」です。症状のない子供の便にもウイルスは含まれています。オムツを処理した後は、必ず石鹸と流水で、指の間や手首まで、30秒以上かけて丁寧に手を洗いましょう。アルコール消毒も有効ですが、ウイルスの種類によっては効果が低い場合もあるため、基本は流水での手洗いが最も確実です。次に、一般的な感染対策である「マスクの着用」と「タオルの共用を避ける」ことです。子供が咳をしている場合はもちろん、看病する大人もマスクをすることで、飛沫感染のリスクを減らせます。また、ウイルスが付着したタオルを介して感染することもあるため、手拭き用タオルなどは、家族間で別々のものを使用するのが賢明です。もし、大人が感染してしまった場合は、今度は自分が感染源にならないための配慮が必要です。咳などの症状がある場合は、職場や家庭内でマスクを着用しましょう。また、体調が許す限り、子供との過度な接触は避け、食器の共用などにも気を配りたいところです。基本的なことばかりですが、この「手洗い」と「マスク」という二つの壁を徹底することが、家庭内での感染拡大を防ぎ、大人の手足口病というつらい経験を回避するための、最も効果的な防御策となるのです。