「飲んだらすぐトイレ」という症状が、日常生活に支障をきたすほど頻繁であったり、急に我慢できないほどの強い尿意に襲われたりする場合、それは単なる生理現象ではなく、「過活動膀胱(OAB)」という病気のサインかもしれません。過活動膀胱は、決して珍しい病気ではなく、40歳以上の男女の8人に1人が、その症状に悩んでいるとされています。では、どのような症状があれば過活動膀胱を疑うべきなのでしょうか。過活動膀胱の診断で最も重要な症状が、「尿意切迫感」です。これは、「突然、前触れもなく、我慢することが難しい、強い尿意」のことです。「トイレに行きたい」と感じてから、実際にトイレに行くまで、ほとんど猶予がないような状態を指します。この尿意切迫感に加えて、以下の症状が一つ以上伴う場合に、過活動膀胱と診断されます。頻尿: 日中に、トイレに行く回数が異常に多い状態。明確な定義はありませんが、一般的に8回以上が目安とされています。夜間頻尿: 夜、眠っている間に、排尿のために1回以上起きなければならない状態。切迫性尿失禁: 尿意切迫感を感じた際に、トイレまで間に合わず、尿が漏れてしまうこと。これらの症状の原因は、膀胱の「過剰な活動」にあります。通常、膀胱は、尿がある程度の量まで溜まるまでは、リラックスして尿を溜めようとします。そして、脳からの「排尿せよ」という指令があって初めて、膀胱の筋肉が収縮し、排尿が始まります。しかし、過活動膀胱では、まだ尿が十分に溜まっていないにもかかわらず、膀胱が本人の意思とは関係なく、勝手に収縮しようとしてしまいます。この、膀胱の意図しない収縮が、突然の強い尿意(尿意切迫感)を引き起こすのです。原因は、加齢による膀胱機能の変化や、骨盤底筋の緩み、あるいは脳と膀胱を結ぶ神経のトラブルなど、様々です。もし、これらの症状に心当たりがあり、日常生活に不便を感じているのであれば、「年のせいだから」と諦める必要はありません。過活動膀胱は、「泌尿器科」で適切な治療を受けることで、症状を大きく改善させることができる病気です。行動療法や薬物療法など、有効な治療法がありますので、まずは専門医に相談してみましょう。